スライド作成講座を実施しました<2025.12.2>
2025年12月2日(火)、オンラインにて、本学博士後期課程1年の鈴木泰我さん(水文科学)による講演「いいスライド研究発表にするには?」が行われました。当日は「手元のスライドをどう直すか」を短時間で整理したうえで、参加者の事前提出スライドを用いて個別に改善を考える流れで進めました。
冒頭では、スライドの目的を「聞き手に、発表者の考えを正確に伝えること」と置き、よくない発表は「結局何の話か分からない状態」だと述べました。重要点として、発表の良し悪しは発表者ではなく聞き手が決める、という基準が示されました。そのため改善の近道は「人に聞いてもらうこと」であり、自分の理解には曖昧さや抜けが残るため、他者の反応で初めて欠落が見えると説明されました。専門外の相手に伝わらない箇所は難しさの問題ではなく、伝え方の改善点として扱うべきだとも述べ、研究費申請など専門外向けの場面を例に挙げました。
スライドの直し方は「生き物の骨格と肉」の比喩で段階化されました。まず構造(文章・図表)が骨組みで、次にデザイン(色・大きさ・配置)が肉付けであり、骨組みを正してから肉付けする順序が有効だと整理しました。骨組みの条件は、必要な情報が揃い、適切な順番で並ぶことです。逆に情報不足、順序の不適切さ、関係のない内容の混入があると、理解不能な“架空の生き物”のような発表になるとして、骨格標本の例も交えて注意を促しました。
骨組みを直す手順としては、①内容を一文ずつに分解して箇条書きにする、②各文を短くする、③意味のまとまりで分類し直す、④その中で本当に必要か再点検する、⑤意味の塊を論理順に組み立て直す、が示されました。繰り返し見直す地道さが不可欠だというまとめも添えられました。
続いてデザイン面では、段落をそのまま置いたスライドは「読まないと分からない」ため不向きであり、「ぱっと見て伝わる」形に整える必要があると述べました。改善の段階として、①段落、②箇条書き、③意味の塊、④塊同士の関係を配置と矢印で図示、の順で示し、具体的には文字サイズのメリハリ(結論を大きく、細部を小さく)、見出しを枠や色で囲う、矢印で論理関係を示す、強調部分の文字色を変える、結論文を最短に絞る、といった方法が紹介されました。
終盤では参考文献が補足され、本文中に引用表示がないと「全て自分の考え」と主張しているのと同じになり得るため、引用箇所と自分の考えを明確に分ける必要があると説明されました。実務的には引用箇所に番号を振り、参考文献リストを登場順に作る方法が提案され、書式はJST資料を参考に必要情報を揃える方針が示されました。
最後に、参加者向けの共通フォーマットとして、背景~目的(仮説を含む)の文章を箇条書きで分解し、ボックス(意味の塊)に分類して配置する手順が提示されました。分類名は自分の理解に合わせて変更してよいとされ、分類と再配置を通じて論理の骨組みを作ることが重視されました。全体として、聞き手基準に立ち、構造とデザインを分けて段階的に改善するための実行可能な手順が提示された講演でした。
