ソフトウェアサイエンス実習を実施しました<2025.11.16>
2025年11月16日(日)、筑波大学において、令和7年度つくばSKIPアカデミー「ソフトウェアサイエンス実習」を実施しました。本実習は、私たちが日常的に利用しているアプリケーションやWebサービスを支える、コンピュータ・ネットワーク技術の基盤について、講義と実習を通して体験的に学ぶことを目的としました。
午前中は、本学客員教授であり、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)産業サイバーセキュリティセンター サイバー技術研究室長でもある登 大遊氏の講演が行われました。この講演では、インターネットやソフトウェアがどのような技術的基盤の上に成り立っているのかを起点に、日本が直面しているデジタル分野の課題や、世界的な技術競争の構造について、具体的な事例を交えながら説明がなされました。
特に、登先生が長年開発に携わってきた「SoftEther VPN」や「VPN Gate」といったオープンソースソフトウェアは、無償で公開され世界中で利用されている一方で、売上という形では測れない非常に大きな社会的便益を生み出していることが解説されました。このような、IT分野の中でも価値が指数的に拡大する、基盤を支える技術を扱える人材の重要性について学習することができました。
加えて、そのような人々が育つ環境についても話題が広がりました。今世界を支えている多くの企業や技術は、大学や研究機関の中に「ガレージ」のような実験環境をつくり、自ら試行錯誤しながらシステムを構築してきたことが紹介されました。これらから、失敗を許容し、まずは動くものを作ってみること、そして改良を重ねていくことの大切さについて学ぶことができました。
講義の感想として、「日本のGDPや国際競争力とICT技術が深く結びついていることが印象に残った」「AI時代において、人間が何を考え、何を作るべきかを考えるきっかけになった」といった、講義内容を社会的視点から捉えた感想が見られました。
午後は、オチュア株式会社によるネットワーク構築実習が行われました。午前の講義内容を踏まえ、受講生は実際に手を動かしながら、Webサーバーやネットワークの基本的な仕組みを体験しました。プログラミングやネットワークに不慣れな受講生も、TAのサポートを受けながらグループで作業を進め、試行錯誤を通して理解を深めていく姿が見られました。
実習後の感想では、「専門用語は難しかったが、図や実例が多く理解しやすかった」「普段使っているインターネットの裏側に、これほど多くの工夫があることを初めて知った」といった声が多く寄せられました。
本実習は、単にプログラミング技術を学ぶ場ではなく、ソフトウェアやネットワーク技術が社会や経済とどのようにつながっているのかを考える機会となりました。受講生が、自身の研究や関心分野とICT技術との関係を捉え直し、今後の学びや探究につなげていくための重要な一日となりました。

