つくばSKIPアカデミー

2024年度第7回サイエンスカフェを開催しました<2025.03.03>

2025年3月3日(月)、2024年度第7回サイエンスカフェを開催しました。今回は、農研機構の藤川貴史氏を講師にお迎えし、「植物の病気と農業」をテーマにお話しいただきました。

藤川氏は、植物の病気が農業に及ぼす影響と植物保護の重要性について、具体的な事例を交えながら解説しました。世界の食料生産量は増加しているものの、食料の分配の不均衡により、多くの地域で食料不足が発生している現状が紹介されました。特に、非穀物食料(野菜や果物)の入手困難さが栄養不足の要因となっている点について説明がありました。

その上で、植物の病気の種類や原因について、詳しく解説がなされました。ウイルス、細菌、カビなど、さまざまな病原体が植物に影響を及ぼし、時には広範囲に被害をもたらすことがあることが示されました。さらに、植物の病気を防ぐための技術として、抗体反応や遺伝子検査、AIを活用した画像診断などの最新の研究成果が紹介され、植物と病原菌の攻防について説明がなされました。

講演後の質疑応答では、植物の奇形と病気の関係、カビのフラクタル構造、病原菌や害虫の農薬耐性進化のメカニズム、農薬の安全性とその検査基準など、幅広いテーマに関する質問が寄せられました。藤川氏は、植物の奇形が遺伝的要因や環境要因によって発生すること、特定の病原菌が奇形を引き起こす可能性があることを説明しました。また、カビのフラクタル構造が植物への付着の仕組みと関係している可能性があることや、農薬が効かなくなるメカニズムについても詳しく解説されました。農薬の安全性については、現代の農薬が厳格な基準をクリアしていること、過去の農薬とは異なり環境や人体への影響が十分に検証されていることなど、身近な話題と関連付けながら、歴史的な流れについても詳しく説明をいただきました。

参加者からは、「植物の病気と農業の関係がよく理解できた」「カビのフラクタル構造という意外な視点が面白かった」「農薬の安全性に関する説明が印象的だった」といった感想が寄せられました。

今回のサイエンスカフェを通じて、植物病理学の奥深さと、農業の持続可能性を支える技術の重要性について理解を深める機会となりました。