令和3年度 SKIP受講生選抜試験を実施しました<2021.6.13>

令和3年度新規受講生を選抜する試験が、筑波大学とオンラインの2会場で実施されました。約60名の応募者が集まり、地学、化学、生物学、工学についての講演を聞き、筆記試験に挑みました。初めて試験を受ける応募者も多く、緊張した趣でしたが、ここでしか聞けない講演に、科学を学ぶ楽しさを感じたことでしょう。講演いただいた先生方からのコメントを紹介します。

♦♦♦講演者からのコメント♦♦♦

地学「チバニアンと地質学」岡田 誠 先生

茨城大学 理工学研究科(理学野) 地球環境科学領域教授

地層ができた時代や環境を調べる方法や、地層のでき方、そして地層の上下を調べる方法など、地質学の基本について予備知識がなくても学べる内容です。

「千葉」が由来となっている「チバニアン」は、77万4000年前~12万9000年前の期間を示す地質年代の名前です。その前の時代が「カラブリアン」で、千葉県市原市にある地層では、この「チバニアン」と「カラブリアン」の境界を一番よく示している、ということが国際会議で認められ、2020年1月に「チバニアン」という名称がつきました。参考:『チバニアン誕生 方位磁針のN極が南をさす時代へ』(ポプラ社)

化学「化学ってなんだろう?化学反応と触媒」佐藤 亮太 さん

筑波大学  数理物質科学研究群 応用理工学学位プログラム 博士課程2年

暑い中マスクをしながらと過酷な環境でしたが、参加してくださりありがとうございました。クロスカップリング反応は、大学生にとってもハイレベルな反応です。それを皆さんにお教えしたのですが、理解力が高すぎて正直驚いています。クロスカップリング反応をはじめ、「触媒」を使うとすごい化学反応を起こせるということを知っていただけてよかったです。講義の補足ですが、実験において「触媒」は分子Aと分子Bを繋げる役割でしたが、「溶媒(アセトン、ヘキサン、クロロホルム)」の役割は、分子Cの集まり方(集合状態)を変える働きを持っています。分子Cの集合状態が溶媒により変化すると、その光り方も変わります。

生物学「植物のSOSを受信する寄生蜂」小松崎 優 さん

筑波大学 生命地球科学研究群 農学学位プログラム 博士課程1年

お話を聞いてくれたみなさんの虫への熱い思いを感じ、とてもうれしく思いました。試験問題について補足として、チャノコカクモンハマキは産卵時に植物を傷つけないのに、チャ葉は寄生蜂をよぶSOSのにおいを出すようです。同じ現象でも種によってメカニズムが異なる点が昆虫生態の奥深いところです。講義では「においや味」についてお話ししましたが、「色や形」も昆虫の生活には重要です。このように生物の行動には様々な要素が影響しているはずですので、実験・観察する時には対照処理も用意すると、きちんとした考察や結論を出しやすくなります。これからも生物を科学することを楽しんでください。

工学「親しみやすいロボットを作るには?」古澤 美典 さん

筑波大学 システム情報工学研究群 知能機能システム学位プログラム 博士課程1年

先日は長い時間お疲れさまでした.皆さんの解答を読んで,正直「よく考えて,しっかり書けてるなぁ〜」と感心しました.今回の問題は難しかったのではないか?と思ったのですが,いかがでしたか?これから,皆さんが生きていく上で「正解のない(分からない)問題」にたくさんぶつかると思います.特に研究は「分からないことを分かるようにする」行為ですから,研究者は日々悩んでいます(笑)でも,どうせ正解がないのですから,失敗もないようなものです.ですから,楽しみながら,自分の考えをフル活用して考えていきましょう!自由な発想が,思いもよらない大発見への鍵かもしれません.

最後に,特に工学の講義が楽しかったよ!という人向けへ.さらに調べてみると良さそうなキーワードを2つご紹介しておきます.

①不気味の谷 ロボットが生物に似るほど親しみやすさが高まるが,あまりに似すぎると急に不気味に感じられる現象.     不気味さを克服するように頑張って似せるか,逆に似せすぎないようにするか…あなたならどうしますか?

②弱いロボット 何でもできる強いロボットではなく,あえて人間の手助けが必要なように設計された「弱い」ロボット.   「弱い」ことで,人間とロボットの繋がりが生まれ,人間の思いやりや優しさが引き出されると言われています.

これからも,皆さん自身から沸き起こる問いやアイデアを大切に生きていっていただければ嬉しいです!            それでは,良いスクールライフを!